美術館で絵を見るとき。
博物館で宝物を鑑賞するとき。
私たちはなるべく静かに、
心穏やかにその作品と向かい合いたいと
考えます。
ですから図書館や美術館、博物館を
作り、維持する人々は、静謐な空間を
作ろうとして、そこに流れる音楽を
認めようとはなさらない。
それは仕方のないことです。
いままでの指向性の強い音などに
晒されたのでは、ゆっくりと読む、
見る、鑑賞する行為の妨げになる
からです。
ただし、残念ながら現代の図書館、
美術館、そして博物館に静かな空間は
存在していません。
そこには空調の風切り音をはじめ、
加湿器の音や、パソコンの機械音、
さまざまなノイズが渦巻いています。
ヒトの聴覚はもの音を探すように
出来ていますから、さまざまな音を
止め、取り除き、静かになったとき、
部屋の片隅に置いた時計がかなりの
音を立てて時を刻んでいることに
気づくことがあります。
私たちが生活している空間に無音という
環境はあり得ないのです。
しかも本当の無音を実現している
「無響室」などに入ると10秒として
そこにいることができなくなるくらい
不安な状態に陥ります。
音が響かず、消えて行く環境は、ヒト
としては耐えられないのです。
7月8日から約2ヶ月間、渋谷の東急
文化村ザ・ミュージアムで開催される
「エリック・サティとその時代」展
ではエムズシステムのスピーカーが
会場の展開に合わせてサティのピアノ
音楽を流しています。
もちろん、サティ展なのでサティの
ピアノなのですが、それと同時に
鑑賞する際のより良い環境を整える
という意味合いでも、この試みは
画期的だと思われます。
私たちを取り巻くさまざまな種類の
ノイズをマスキングして、落ち着いた
穏やかな環境を実現してくれるはず
です。
サティが生きたその時代の空気感
とともに、作品に向かい合うときの
穏やかな環境も体感してみてください。

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