隣の部屋の音が気になるとき、選べる方法は「遮る」だけではありません。空間を心地よい音でやわらかく満たし、刺激音の輪郭をゆるめて、意識の前に出にくくする――私たちはこれを、音による「マスキング」と呼んでいます。
壁を厚くする、防音材を入れる。たしかに確実ですが、賃貸では難しく、費用も工期もかかります。この記事では、工事の前に検討できるもうひとつの選択肢として、「音で包む」という考え方をお話しします。
隣の音は、消さなくても「気になりにくく」できる
音が気になる、という感覚には二つの要素があります。ひとつは音の大きさ。もうひとつは、その音がどれだけ「輪郭」を持って届くか、です。夜、静まり返った部屋で聞こえる足音や話し声は、決して大きな音ではありません。それでも気になるのは、静けさの中でその音だけがくっきりと浮かび上がるからです。
マスキングは、この二つ目に働きかけます。音そのものを止めるのではなく、空間の側を整えることで、刺激音が突出しない状態をつくる。遮音が「壁」の話だとすれば、マスキングは「空気」の話です。
なぜ、静かな部屋ほど隣の音が気になるのか
私たちの暮らしは、テレビ、パソコン、家電、空調、交通音といった、方向のある人工的な音で満たされています。小さくても途切れず、どこから鳴っているのかを意識させる音たちです。
そうした音を一つずつ消していくと、部屋は静かになります。ところが、静かになった部屋では、残った音がかえって目立ちます。壁の向こうの生活音は、方向がはっきりしていて、不規則で、いつ来るかわからない。静けさが深いほど、その一つひとつが意識に引っかかります。
「静かなはずなのに、どこか落ち着かない」。私たちが音環境宣言に書いたこの感覚は、隣の音に悩む方の多くが実感されていることだと思います。問題は音量ではなく、音の在り方にあります。
「マスキング」には二つの流儀がある
サウンドマスキングという言葉は、もともとオフィスで使われてきました。会話の内容が周囲に聞こえないように、空調音に似たノイズを流して覆い隠す。多くのオフィスで採用されている、確立された方法です。
ただし、この方法は「意味のない音で覆う」ことが前提です。住まいで一日じゅうノイズを流し続けるのは、心地よい状態とは言えません。
私たちが考えるマスキングは、もうひとつの流儀です。覆い隠すのではなく、質の高い音で空間を包む。刺激音の波動をゆるやかにして不快な音を減らし、空間そのものを心地よく整える。「音を消す機能」ではなく、「空間をコンディショニングする機能」として位置づけています。
ノイズで覆うか、音で包むか。同じマスキングという言葉でも、目指す状態はまったく違います。

波動スピーカーは、どう包むのか
「包む」という言い方をするのには理由があります。一般的なスピーカーは正面に向かって音を飛ばします。音には方向があり、聴く人は「スピーカーがそこにある」ことを意識し続けます。これでは、隣の音とは別の「方向のある音」が一つ増えるだけです。
波動スピーカーは円筒形で、音が360度に広がります。一台でステレオが成立し、正面という概念がありません。部屋のどこにいても同じように届き、どこから鳴っているのかを意識させない。方向を持たない音が空間を満たすと、壁の向こうから届く方向のある音の輪郭が、相対的にやわらぎます。
素材にも特徴があり、自然素材ならではの落ち着いた音の質感が、住まいの空気になじみます。一台一台、日本の職人が楽器のように一つひとつ手作業で作っているスピーカーです。
森の中に立ったとき、鳥の声も風の音も、一方向から強く届いてはきません。音は、ただそこに「在る」だけです。私たちが目指しているのは、部屋の中にその状態をつくることです。
集合住宅で使うときに、私たちが伝えていること
「音を流したら、今度は自分が音漏れの側になるのでは」というご心配をよくいただきます。波動スピーカーは床や壁への振動が極めて少ない構造で、集合住宅でもお使いいただけます。
「騒音が最大のクレーム」と考えられている高級ホテルに採用されていることからも、その特徴がよくわかります。
もうひとつ大切なのは、音量を上げなくてよいことです。小さな音量でも音が痩せないため、夜間でも心地よさは変わりません。マスキングは大きな音で覆うことではなく、小さな音で空間を満たすことです。音量を絞ったときにこそ、音の質が問われます。
選曲についても、ひとことだけ。よく耳にするメロディーが流れると、意識がそちらに向いてしまい、かえって落ち着きません。主張しすぎない音源を、小さく、長く流すのが基本です。
この考え方は、住まいに限りません。法律事務所の相談室や銀行の個室のように、隣の話し声が聞こえてはいけない場所でも、同じ理由で選ばれています。オフィスでの考え方は「静かすぎるオフィス」が働きにくい理由でお話ししています。
遮音の前に、音の在り方を整える
隣の音が気になるとき、壁を厚くする前に、部屋の音の在り方を見直すという選択肢があります。私たちはこれを「音のエアコン」と呼んでいます。
音のエアコンとは、音を「聴かせるもの」ではなく、温度や湿度のように空間の質を整える環境因子として捉え、音の広がり方や方向性を、人に寄り添うかたちに設計することで、人が無理なく音と同じ空間にいられる状態をつくろうとする音環境デザインの考え方です。
遮音が必要な場面は、もちろんあります。ただ、その手前に、工事をせずに今日から試せることがある。そのことを、まずお伝えしたいと思いました。東京・新富のショールームでは、実際に音に包まれる状態をご体験いただけます。
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Frequently Asked Questions
Will sounds from the neighboring room be eliminated?+
Will sound leak to neighboring units if used in an apartment building?+
How is this different from conventional sound masking?+
Why is it that the quieter a room is, the more noticeable sounds from neighboring spaces become?+
Are there any guidelines for selecting music to use for sound masking?+
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