
2025/5/30
もう二十五年が経ちました。
父が亡くなってからの年月です。
母とは晩年まで会話が多く記憶も鮮明ですが、父との会話となると、なぜだかあまり思い出せません。
もともと寡黙だったのか、私がその頃まだ幼かったからなのか、それとも日々の忙しさに追われていたのか。
ただ不思議なことに、子どもの頃の記憶だけは妙に鮮やかです。
小学校でも中学校でも、整列すれば常に一番前に並んでいた小柄な私にとって、父はまさにヒーロー。
いや、スーパーマンでした。
スクラムハーフとして泥まみれでラグビーをし、戦後の混乱期には進駐軍のキッチンでコックをしながらプロボクサーとして4回戦に出場し、その後は製鉄所で熱管理という最先端の分野に携わる。
社会人になってからも水泳やバレー、ゴルフ、野球と県大会で活躍し、お酒を飲むとコサックダンスを延々と踊る、そんな父の姿が今でも鮮明に浮かびます。
なかでも、社宅の前で行っていたキャッチボールは、私の宝物です。
細い道に立ち、一球一球にシナリオを与えてくれる父。
「4対3でリード、7回裏、ツーアウト満塁、カウントは2ストライク2ボール…さあ、ここにズバッと決めろ!」
そんな風に実況中継をしながらミットを構えてくれるのです。
その声に合わせて、私はまるで甲子園のマウンドに立っているかのように力いっぱい投げました。
小さな私のピッチは時に暴投になりましたが、父は軽やかにジャンプしてキャッチし、ナイスピッチ!
と笑ってくれたものでした。
最近になって原田マハさんの『キネマの神様』を読み、映画『フィールド・オブ・ドリームス』に言及されているのを目にしたとき、キャッチボールは男の子にとって特別な儀式だったのだと改めて思いました。
あの映画のラストシーンのように、父ともう一度キャッチボールができたら……そんな想いが胸に広がります。
もし、あなたのお父さまがご存命でしたら、今年の父の日にはぜひ、言葉や贈り物で感謝を伝えてください。
何気ない一言や、ふと手にしたプレゼントが、未来の「かけがえのない思い出」になるかもしれません。
追記:父の日に寄せて 【 感謝のかたちとして】
そんな父がいまもそばにいたなら、この音を届けたかった、そう思うことがあります。
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耳だけに頼らず、空間そのものをやさしく鳴らすことで、自然に、心地よく、必要な音だけがスッと届いてくる。
「ありがとう」と伝えるプレゼントに、音のギフトという選択も。
父の日をきっかけに、“聴こえる”ではなく、“届く”音を贈ってみませんか。
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